キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series

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2017.10.04

10月6日(金)放送開始TVアニメ『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』
原作者・時雨沢恵一先生が『キノの旅』のこれまでを振り返るインタビューを公開!

いよいよ明日10月6日(金)よりAT-X、TOKYO MXほかにて放送開始の『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』。
14年ぶりの再TVアニメシリーズの放送を直前に控えた原作者の時雨沢恵一先生に『キノの旅』のこれまでや、新たなTVシリーズに対する思いを語って頂きました。

就職していたら『キノの旅』は存在していなかった!?『キノの旅』執筆秘話

―― 『キノの旅』シリーズは時雨沢先生の小説家デビュー作になります。どのような経緯で書かれた作品だったのでしょうか?

時雨沢 : 当時の自分にとって小説家という職業は単に「なりたいなぁ」と思っているぐらいのものでした。ですから毎日何かを書いて投稿していたとか、小説家になるために何かをやっていたわけでは全然なくて。大学を卒業して仕事を見つけて、ちゃんと稼ぐ方法を見つけてから目指すべき将来の目標くらいに思っていたんです。ところが現実は厳しく、大学は卒業したものの就職活動に失敗してしまい、さらにはバイトも見つからずほぼニート状態になってしまいまして……。「むしゃくしゃしてやった」みたいな気分で書きはじめたのが『キノの旅』を書こうとした切っ掛けになりますね(笑)。

―― そこで書かれた『キノの旅』が第6回電撃ゲーム小説大賞の最終候補作にまで残ったわけですね。

時雨沢 : 小説を書こうと一念発起したのが1999年の年頭ですが、応募の締め切りはその約3ヶ月後だったんです。さっそく長編を書き始めたんですが、なかなか上手くいかずいきなり挫折してしまいまして。「どうしよう?」と悩んでいたところ、短編でも応募できるということを知って、前から考えていた「平和の国」のオチの部分を元にストーリーを組み立てて『キノの旅』の原型となるエピソードを書き上げていきました。これが上手くいったので、さらに続けてその他のエピソードを書いていきまして、長編の文字数分溜まった段階でそれをまとめて応募することにしたんです。

▲その後『キノの旅 the Beautiful World』シリーズとして電撃文庫より現在に至るまで刊行され続けている。

―― 『キノの旅』のアイデアは昔から温められていたものだったんでしょうか?

時雨沢 : パソコンで日記を付けていたんですが、そこにたくさんのアイデアメモを残していたんです。そこから旅物語であること、「平和の国」のオチの部分などをネタとして使いました。あとオートバイが好きだったので主人公の相棒はバイクに、それも喋るバイクにしようとは考えていました。それ以外は書いている最中にいろいろと決まっていきました。キノという名前も途中で考えてつけました。

―― バイクを使った旅ものというスタイルが面白いなと思いました。

時雨沢 : 昔から『銀河鉄道999』や『ニルスのふしぎな旅』といった一話完結で物語が展開する旅行ものが好きだったんです。ただ初めて『キノの旅』を書いた当時は旅の目的がなんなのかとか、その途中で主人公の成長をどう描いていくかということを全然考えてなかったので、そこは全部すっぽかして旅自体を目的にストーリーを展開させていくことにしました。設定についても特に悩まず、「こういう話を書きたいな」とか「読みたいな」と思ったものを、自分の得意そうな分野に絡めて書いていった感じです。例えばオートバイに乗って旅をするという基本的なスタイルも、自分自身が大学時代にバイクで旅行に行った経験を元にしていまして、執筆時は「ツーリングに行きたいな」などと思いながら書いていました(笑)。

▲キノと共に旅をする相棒は喋るモトラド(注・二輪車。) 空を飛ばないものだけを指す)のエルメス。
見た目によらず、キノとの会話の中でことわざや慣用句を言い間違えるなどの一面も。今回のTVアニメでは斉藤壮馬さんが演じる。

―― この物語にはいろいろな国が登場して様々なエピソードが描かれますが、時雨沢さんのお気に入りのエピソードはどれでしょうか?

時雨沢 : 各巻に1話ずつぐらい会心の出来だと思える話があるんです。あえて好きな話を、と聞かれたら2巻に収録されている「優しい国」かなと思っています。ビターエンドなんですけど、割と美しい話ですし、オチまでひっくるめてお気に入りのお話ではありますね。あとエピソードではないんですが、一巻の全体的な構成もすごく気に入っています。「平和な国」のオチの衝撃を最大限に活かせるように一冊まるまる使って仕掛けを施しているんですが、自分で書いてて「これは上手くハマったな」という満足感はすごくありました。

14年ぶり二度目のTVアニメ化に対する思い

―― 『キノの旅』は2003年に一度TVアニメ化されています。そのときの思い出をお聞かせください。

時雨沢 : 2001年の電撃文庫の作家忘年会の前に編集部に呼ばれまして、「アニメの話しがあるんですよ」って言われてポカーンとなったことを憶えています(笑)。当時はまだまだいわゆる“ライトノベル”のアニメ化なんて極少数の大ヒット作のみでしたし、そもそもまだ新人でひたすらがむしゃらに書いていた頃だったこともあってホントにビックリしました。自分としては「とにかくやってください」ということでお願いするだけだったんですが、本当に素敵な作品に仕上げていただきまして。原作も大増刷がかかるほど売り上げが伸びまして、これで一気に『キノの旅』の知名度が上がったなというのはありました。

―― それから二度目のTVアニメ化が決定し、14年後となる今年の秋に『キノの旅 –the Beautiful World- the Animated Series』が放送されるわけですが、今回のアニメ化のお話を聞いたときの気持ちをお聞かせください。

時雨沢 : うれしかったですね。10月に最新巻である21巻が発売されるんですけど、途中で書くのをやめないで本当によかったなと思いました(笑)。新刊が出てないとアニメ化のお話はなかったでしょうし。頑張ってきたご褒美だなと思います。これからの仕事の励みにもなりました。

―― 今回はかなり深く制作に関わっているとお聞きしています。

時雨沢 : 脚本会議の最初から全部出席させてもらっています。作業内容としてはアニメ化にあたってのエピソードの選定を田口監督やシリーズ構成の菅原さん、プロデュース陣とともに行うことから始まり、脚本や絵コンテのチェックなどを担当しています。ほかにも毎回アフレコに行ってますし、ダビングなんかにも立ち会わせていただいています。どれもすごく面白い経験で勉強になるなと感じています。

―― 脚本会議ではどのようなお話をされていましたか?

時雨沢 : まずはどのエピソードをアニメ化するかというところが最初の仕事となりました。前回のアニメの二期というわけじゃないので、被っているお話も幾つかありますが、基本的に人気のお話を中心に、なるべく新しい話も入れていこうということになりました。さらにシズを出すならこのエピソード、ティーを出すならこのエピソードみたいな感じでそれぞれのキャラクターを描く上で必要な回をピックアップしていった感じです。また今回のアニメ化にあたってはアクション重視というテーマがありましたので、そうしたシーンの多い回も選ばせてもらいました。自分としては「このエピソードはぜひアニメで見たい!」という好みのままに選んだりしたところもあるのですが、最終的にはいい感じにまとまったと思っています。

▲『キノの旅 –the Beautiful World- the Animated Series』でのアニメ化エピソード一覧。
2015年に15周年を記念して行われた人気投票の結果を元にアニメスタッフとの話し合いを行い
1巻~20巻までのエピソードを幅広くピックアップした。

―― 脚本や絵コンテのチェックなどはどのようにされたのでしょうか?

時雨沢 : シリーズ構成・脚本を担当してくださっている菅原雪絵さんが原作のファンで、よく内容をわかってくださっていたので、基本的にはお任せしていました。自分の仕事としては出来上がった脚本や絵コンテを見て、「ここはカットしていいので、こっちのワードを入れてください」みたいな細かい取捨選択を担当しています。大きなNGはほとんどなく、スムーズに決まる場合が多くて、苦労するようなことはあまりありませんでしたね。

―― アフレコもご覧になっているというお話ですが、今回のアニメ化ではキノを悠木碧さんが演じることになりました。

時雨沢 : 『多数決ドラマ』(2016年に電撃文庫とニコニコ動画が行ったコラボ企画。分岐した物語のルートを、視聴者自ら多数決で決定するコンテンツ)のときに「キノ役は悠木さんに決まりました」と聞いてすごくうれしかったんです。実は前回のアニメ化のときにさくら役を演じていてくれていたんですが、当時はまだ本名で出演されていたこともあって、つい最近まで彼女が悠木さんだと気づかなかったんです。ある日ふと悠木さんの経歴を調べてみたら「さくら」と書いてあってぶったまげました(笑)。そんなこともあって個人的に思い入れのある悠木さんに「キノを演じてもらえたら」とか思っていたんですが、実際に悠木さんに決まったと聞いたときはビックリしました。さらには多数決ドラマだけでなくTVアニメでも演じてもらえるということで、アフレコをすごく楽しみにしていました。

▲『キノの旅 –the Beautiful World- the Animated Series』でキノを演じる悠木碧さんは
14年前のTVアニメシリーズでも『優しい国』のさくらを演じていた。

―― 収録での実際の演技を聞いての感想は?

時雨沢 : 多数決ドラマのときに初めてキノの声を聞かせてもらったんですが、そのときは前作のアニメでキノを演じてくれた前田愛さんの演技にちょっと寄せてくれていたようだったんですね。でも無理に寄せる必要はないと思って、そう悠木さんにはアドバイスさせていただきました。そんなこともあって実際にアニメのアフレコが始まってからは全然違和感なく悠木さんならではのキノを演じてくれていまして、ぜひ早くみなさんにもこの声をお届けしたいと楽しみにしています。

―― ほかにも作中に登場する様々なアイテムの監修をされていると聞いています。

時雨沢 : 一番こだわったのはエルメスと銃のデザインですね。特にエルメスのデザインについては結構細かくアドバイスさせてもらいました。3Dで作ってもらったんですけど、どうしても排気管の取り回しが気になりまして。「ここはもうちょっとお願いします」と、とことんまでこだわってすごくいいものに仕上げていただきました。パーツ単位で作っているのでサスペンションも動きますし、エンジンのところにバルブという空気を出し入れするパーツなんかももちゃんと動くんです。めちゃくちゃ格好いいですし、ここまで細かいパーツをアニメで再現したのはこの作品がおそらく初になるんじゃないかと(笑)。本当に苦労をかけましたが、大満足といえるものができました。

▲エルメスの3DCGは、アップのカットで見ると細部の部品などよりこだわりが感じられる造り。
ぜひバイクファンの方にも見ていただきたい。

―― 銃の方はデザインだけではなく、ガンアクションなども監修していると聞いています。

時雨沢 : 銃の取り回しについては嘘があったりすると嫌なので、絵コンテの段階で詳細にチェックさせてもらっています。例えば、狙いをつけるときは利き目の前に必ず銃を持ってきてくださいとか、本当に細かい部分までこちらの意向を反映させてもらいました。自分自身が監修に参加して納得の作りになっていますので、そのあたりも見てもらえたらというのはありますね。

―― 最後にファンにみなさんにメッセージをお願いします。

時雨沢 : 今までずっと『キノの旅』を応援してきてくれたファンのみなさんには、今回のアニメ化への期待感や原作への想いを絶対に裏切らない内容になっていますので、ぜひ楽しみに見てくださいと伝えたいですね。そしてまだ一度も『キノの旅』を知らないというビギナーの方々には、まずアニメでその面白さを知っていただいた後も原作も読んでいただけたらうれしいなと思います。原作者とスタッフ一同力を合わせていろんな遊び要素も交えながら一生懸命作っていますので、秋の夜長に『キノの旅』、ぜひご視聴ください。